宇宙天気ニュース (これは過去のニュースです)

 
当時「情報通信研究機構宇宙環境計測グループ」よりお届けした記事です
太陽フレア・磁気嵐・オーロラ活動など、宇宙天気の最新情報をお知らせするページです。

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これまでの経過 (過去のニュースの全リスト)
2006/12/13 11:55 [速報] 13日11時半(世界時13日2時半)に、X3.3の大規模フレアが発生しました。
2006/12/14 11:13 昨日、X3.4の大規模フレアが起こりました。今夜以降に、かなり高速の太陽風が到来し、激しい磁気圏活動を起こす可能性があります。
2006/12/14 23:46 [速報] 高速太陽風がやってきました。速度は900km/秒を超えている様です。今後の磁気圏擾乱に注意してください。
2006/12/15 13:51 900km/秒の非常に高速の太陽風が到来しました。その後、磁場が大きく南を向き、磁気嵐が大きく発達しています。
2006/12/15 20:36 [続報] 激しい磁気嵐が発生しています。オーロラもたいへん活発です。高速太陽風は弱まりつつあります。
最新のニュース

2006/12/16 09:57 更新
大規模な磁気嵐は、終息に向かっています。今夜以降、次の高速風がやってくるでしょう。

担当 篠原

大規模な磁気嵐は、概ね終息を迎えています。
昨夜のニュースも参考にご覧下さい。

今日の1枚目の画像は、SOHO EIT294の太陽写真です。
きれいなので、大きな写真を掲載しました。
太陽の西側に、930黒点群の領域が明るく輝いているのが見えます。
930黒点群は今も大きな勢力を保っていて、
大規模フレアを起こす可能性も残されているそうです。

X線の図によると、昨日の朝、15日7時(世界時14日21時)のX1.5大規模フレア以降、
930黒点群は目立った活動を起こしていません。
しかし、X3.4から2日弱経ってX1.5を起こした様に、
大きな活動は一休みしてから起こるということも多いので、
黒点群の規模が小さくなるか、西に没して行くまでは注視する必要があるでしょう。

一方、EIT284の写真で見られる様に、黒点群は西の端へ近づいています。
地球への影響は次第に限定的なものとなっていくでしょう。


昨日やってきたたいへん高速の太陽風は、
夜の間に速度を落とし続けていたのですが、
16日5時(世界時15日20時)に600km/秒を切ったところで反転して、
現在は650km/秒に戻しています。
一時的な変化だと思われますので、やがてまた下がり始めるでしょう。

太陽風磁場は、だんだんと強度を落としています。
現在は、2〜3nTとかなり弱まっています。
磁場の南北成分は、今日の図では一貫して南を向き続けています。
磁場強度の弱まりとともに、こちらの振幅も減衰していて、
現在は、ほぼ0nTに近づいています。

昨日の強い南向きの影響で、
静止軌道のGOES衛星が磁気圏の外に飛び出してしまうという事件がありました。
昨夜のニュースでデータを紹介しています。
昨日の様な、大きな太陽風の乱れの時だけに見られる、珍しい現象ですので、
昨夜の記事もご覧下さい。


AE指数の図で見ると、図の前半は、高速風と強い南向き磁場の影響で、
かなり激しく乱れています。
この頃は、オーロラの光る領域が普段よりも低緯度側に広がってしまい、
AE指数としては正しい計測になっていません。
1500〜2000nTの変動が記録されていますが、
実際にはより激しい活動が起こっていたと考えられます。
この広がりが激しくなると、普段オーロラを見られない様な場所で、
オーロラが見える様になるのです。

太陽風の速度と磁場強度が下がるにつれて、オーロラ活動は弱まっています。
AEの最後の部分では500nTくらいの通常レベルの変動になってしまいました。
太陽風自体は、まだ十分高速ですので、磁場が南向きであれば、
通常レベルのオーロラ活動は続くでしょう。

沖縄の磁場データでは、静穏レベル(青線)から-180nTくらい下がる
大きな磁気嵐が記録されました。
最も下がったのは、15日17時(世界時15日8時)頃です。
この頃、太陽風では磁場が-10nを切り、速度も700km/秒を割って、
太陽風の乱れが本格的に弱まり始めました。
この結果、磁気嵐の発達は終わりを迎え、沖縄の磁場データは回復に向かったのです。
現在は-50nTくらいまで戻っています。


太陽風の擾乱は終息に向かっていますが、
続いて、昨日のX1.5大規模フレアによる乱れがやってくると思われます。
SOHO LASCO C3カメラでは、CME(太陽ガスの放出現象)が観測されています。
この様子では、ガスの濃い部分は南西(右下)に向かっている様です。
淡いですが、太陽全体にもガスが広がっていますので、
地球へも高速風はやってくるでしょう。
しかし、昨日ほどの乱れにはならないと思います。
到来は、今夜から明日にかけてとなるでしょう。

速度が遅めでも、磁場が大きく南を向くと、磁気圏は大きく乱れます。
高速風到来後の、太陽風の変化に注意する必要があります。


太陽放射線は、昨日のX1.5フレアで一度増加しましたが、
規模はそれほどでもなく、
10PFUから200PFUに上がった程度でした。
この点でも、フレアの規模が小さくなったことが分かります。
(黒点群の位置の問題もあるので、規模だけが理由にはなりませんが)
放射線のレベルはすぐに弱まり始め、
現在は警戒ラインの10PFUを切り、4PFUくらいに弱まっています。


一方、放射線帯の高エネルギー電子は急増しています。
高速太陽風の影響で大きく減少しましたが、その後、また一気に回復しています。
衛星の位置による変化(時刻依存性)があるために、
単純にこの図の通りの変化とはいえませんが、大筋はこのような変化だったでしょう。
現在は警戒レベルの10,000を超えて、40,000に達しています。
衛星の運用では注意してください。

明日のデータでは更に増加している可能性がありますが、
一方で、次の太陽風の乱れによって大きく減少している可能性も高いです。
ただし、その場合でも、高速太陽風通過後の再上昇に注意する必要があるでしょう。



SOHO EIT284の太陽写真。15日22時(世界時15日13時)。930黒点群が明るく輝いている。
(c) ESA & NASA


SOHO衛星LASCO C3カメラの映像
(c) SOHO (ESA & NASA)

12/14 23:42 UT

12/15 00:42 UT

12/15 01:42 UT

12/15 02:42 UT


SOHO衛星のMDIカメラによる太陽黒点
(c) SOHO (ESA & NASA)



GOES衛星の太陽X線データ
(c) NOAA/SEC



ACEが観測した太陽風の磁場(1番上の枠、白線は全体の強度、赤線は南北成分)
および、太陽風の密度(3番目の橙線)、速度(4番目の黄線)
(c) NOAA/SEC



リアルタイムAE指数
下段のAEグラフの値が高くなると、オーロラ活動が活発化しています。
(c) 京都大学, NICT



シベリアで観測された3日間の磁場データ
右側の3分の1が、昨日のデータになります。グラフが上がったり下がったりすると、オーロラ活動が活発化しています。
(c) NICT



沖縄の磁場擾乱
下へ下がるほど、擾乱が発達している事を意味します。
(c) NICT



27日の太陽周期に合わせたデータプロット
太陽が同じ面を地球に向けていた27日前の変化から、今後を予想することができます。
(c) NICT
太陽X線
○はM以上
太陽風速度
km/sec
セクター
Bx (nT)
IMF Bz,Bt
nT
沖縄変動
nT
沖縄短期変動
nT
静止軌道電子
/cm^2 s sr
太陽X線
○はM以上
太陽風速度
km/sec
セクター
Bx (nT)
IMF Bz,Bt
nT
沖縄変動
nT
沖縄短期変動
nT
静止軌道電子
/cm^2 s sr
GOES衛星の太陽放射線データ
(c) NOAA/SEC



GOES衛星による、静止衛星軌道における高エネルギー電子の変化
(c) NOAA/SEC





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篠原 学( shino@kagoshima-ct.ac.jp )宛てお知らせ下さい。